GLOCAL_Vol17
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6放送研究会の番組映像をアーカイブしたい―未組織化映像のアーカイブおよび利活用手法の研究―の編集意図の元、繋げられている。「映像」は、アーカイブが持つ全ての「素材」の中から、「単一番組」を作るために選択されたものであり、動画および静止画の区別はしない。 また、各段階に応じて検索のためのアクセスポイント(以下AP)が変化する。例えば、 「素材」では撮影者や撮影対象、日時、イベント名、季節などがAPになる。それに対し、「VTR」は編集者や撮影時期、あるいは季節、イベントや尺などがAPになる。組織内では毎年同じイベントの開催や特集が組まれることが多く、恒例イベントでは過去に何を撮影したのかを下調べとして検索するため「素材」が検索される。その際、APは撮影対象やイベント名、オープニングや特集映像などのタイプ、撮影時期、季節などが挙げられる。また、何年前のある時期にどのようなものが取り上げられていたのか検索する際は、多くは番組から遡るため、VTRが主な検索対象となる。この場合、APは、放送日時や放送時期、担当者名などである。 このように映像編集を効率よく行うためには、VTRとなる素材の映像を検索しやすい状況に整える必要がある。しかし、番組になる前の、膨大なデータひとつひとつに手作業でメタデータを付与することは、積極的には行われていない。 また、ひとつの組織に所属する情報資源は、その組織内でのみ有用な情報が多い。例えば、大学のような組織では入学年次だけでなく、サークルでの活動期間などがこれに当たる。こはじめに 近年、インターネットの発展に伴い、デジタルアーカイブや機関リポジトリが様々な組織で構築されている。これらは、運営組織ごとに収集対象を定め、一定のメタデータを付与することで利活用することが目的の一つである。実際に東日本大震災においては、震災前と震災後の映像(静止画および動画)やインタビューを「地域の記憶」と位置づけ、デジタルアーカイブとして構築し注目された。本研究は、組織による地域情報の収集・蓄積・利活用を「地域の記憶」アーカイブを構築していく上で重要な持続可能システムの中核であると位置付ける。 本研究の目的は、中部大学の公認クラブである放送研究会が制作する映像と付随する情報の組織化を行うことで、利活用しやすい映像アーカイブをつくることである。具体的には、カット単位で検索可能なメタデータスキーマとシステムの作成および検索手法を考案することを目的とする。本研究における動画の考え方 本研究では、映像の中でも動画を中心に取り扱う。動画アーカイブを作成するにあたり留意すべき点として、未編集動画と編集済み動画が共存することが挙げられる。近頃はさまざまな組織の中で録画・放送業務を行う部署も存在する。組織の記録として、単に写真や動画を撮るだけでなく、なんらかの編集を経て蓄積されていることも多い。さらに、市民の持つ端末の高性能化が進み、写真のように録画しただけの動画も以前よりも蓄積される機会が増加した。つまり、動画をアーカイブして利活用する場合、編集作業が施されたものと、録画しただけのものが混在していても使いやすいアーカイブを作る必要がある。 本研究では、動画コンテンツを図1に示すように考える。 まず、「番組」は同一の番組名でまとめられる「単一番組」の集合体である。「単一番組」は1つ以上の「特集」VTRとオープニングVTR(以下OP)とエンディングVTR(以下END)をリニアに接続したものである。「単一番組」を構成する「特集」VTRは、1つ以上の「イベント」を表現している。VTRはOPかENDか特集を単一の「映像」として固定したものであり、しばしば別番組で再利用される単位である。VTRは「映像」から取り出した1つ以上の「カット」で構成されており、一定国際人間学研究科 言語文化専攻 博士前期課程1年安永 知加子(YASUNAGA Chikako)岐阜県土岐市出身。2020年3月に中部大学人文学部コミュニケーション学科を卒業。同年、国際人間学研究科に進学。在学中、同大学のサークルである放送研究会に所属し、番組企画・制作・放送の経験を活かし、映像アーカイブの研究を行っている。s図1. 本研究における動画の構成図

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