GLOCAL vol.12
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1 中部大学大学院、国際人間学研究科レポート GLOCAL Vol.12 をお届け致します。 6年前に創刊致しましたGLOCALも今回で第12号となり、本研究科における最新の教育・研究動向の一端をお伝えすることができ、うれしく思います。本研究科は、国際関係学研究科をルーツとする国際関係学専攻、人文学部の設立とともに生まれた言語文化専攻、心理学専攻、それにもっとも歴史の新しい歴史学・地理学専攻の、以上4専攻によって構成されています。院生は、国内の大学の卒業生、海外からの留学生、それに社会人と多様で、それぞれ独自に抱く研究目的にしたがい、日々、学修に励んでいます。総勢70余名の教員スタッフも、院生の研究目的達成に向け、日々苦闘しながら指導に努めています。 さて、小誌GLOCALの名称由来でもあるGLOBALとLOCALのいずれの分野においても、目の離せない出来事が続いています。政治、経済、社会の動きは激しく、毎日のように報じられる刺激的ともいえるニュースに目を奪われがちです。しかし、ときにはこうしたニュースから少し距離を置き、ものごとを中、長期的視点からとらえることも大切ではないでしょうか。歴史的思考がまさしくそれであり、目の前に見えている現象の遠因にもつながる時点あるいは地点にまでさかのぼって考える姿勢をどこかで用意しておく必要があるように思います。本号では、現代世界につながる近代という時代がいかに生まれたか、その形成の過程を国家成立と絡めながらとらえる論考を取り上げました。 近代国家の成立条件のひとつに国境線の確定があります。経済活動の発展や膨張の必然的結果として、それまで曖昧に扱われてきた境界の存在が俄然、意味をもつようになりました。土地と土地との間の境目をめぐる問題は国家レベルのみならず、国内の行政レベルなどにも存在します。GLOBALかLOCALかの違いを問わず、人間は自分を含む集団のテリトリーにことさらこだわる生き物かもしれません。もっとも、人間をすべてそのようにとらえるのはやや一面的であり、個々の人間の心のあり様、すなわち心理的動機づけのメカニズムはそれほど単純ではありません。個人ごとに異なる心のあり様は、それが集団となっても多様な意見や考え方として尊重されるべきであり、国家の名のもとによる一方的な境界の押し付けは、民心から遠いといわざるを得ません。今号は、地球レベルでの境界線確定や個人レベルでの心理的動機づけをめぐる議論も収めました。 小誌を通して、本研究科の日頃の活動の一端がご理解いただければ幸いに存じます。2018年3月18日林  上(中部大学国際人間学研究科長)ごあいさつ

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