GLOCAL Vol.11
8/16

6孫のために働く―グルジアのバズロバで働く女性たち―「市場で働く女性たち」 ここでは市場で働く労働者の中から、一定期間定住し出稼ぎに来ている女性労働者を紹介する。同じ村出身5人でユニットを組み順番に市場へ労働に来る。 市場では、常時3人体制で仕入れから販売まで行うが、販売するときだけはそれぞれ独立して陳列し独自の販売方法で販売する。その彼女たちをインフォーマントとし、参与観察した中から過酷な状況の中彼女たちの一日の仕事の流れや食事、宿泊場所が今までにわかった。そしてその目的は何にも代えがたい「孫のため」であることがわかった。おわりに 今後の課題として、この女性5人組を引き続き調査し、彼女たちの出身地であるチアトゥラ村においての家族関係や生活、家族の職業などについて調査する。そのほか村での暮らしや、家族のあり方、家族の役割やその地域の女性が持つ特有の価値観を新たに情報集する。 グルジアでは、かつて社会主義であった。しかし、男女の役割や仕事の分業がある。彼女たちの労働状況を見ると社会主義と宗教が男女の役割にどう影響を与えているのかを今後も調査したい。はじめに グルジア(現在のジョージア共和国、以降グルジアとする)の首都トビリシにディゼルテル・バズロバという市場がある。ここは、ステーション・スクエア駅という総合駅の近くにあり、利便性のいい場所にある。この商空間で得られた情報をもとにフィールドワークで実際に経験したことを交えながら考察した。 さらにそこの市場で働く出稼ぎ中高年女性5人組みをインフォーマントとし、「孫のため」と言いながら、現金収入を稼ぐ様子を参与観察してきた。彼女たちの市場での生活に焦点をあてる。卒論内容と共に、今後の課題についても紹介する。「グルジアの概要」 グルジアは、黒海の内陸に面していて北にロシア、南はトルコ、アルメニアがあり、東は、アゼルバイジャンに隣接していしている。気候は、首都は乾燥性大陸気候だ。温泉地もある。面積は日本の北海道に等しい広さである。 正式な国名は、ジョージア共和国=Georgia英語名、グルジア=Грузияはロシア語名である。国内では、サカルトゥヴェロ=საქართველოと呼ばれている。全体の人口は、430万人で、このうち首都トビリシには117万人が住んでいる。国土の面積は7万平方キロメートルでおよそ、日本の北海道と同じくらいの広さである。 次に民族は、主にグルジア人(カルトゥリ人)が83.3%で、アゼルバイジャン人6.5%、アルメニア人5.7%、ロシア人1.5%、オセット人0.9%、クルド人0.5%の順になる。言語は主に、グルジア語(カルトゥリ語)を話す。ロシア語も併用されている。 経済は、畜産業が盛んである。特に、乳製品は種類も多い。養蜂もさかんである。特産品は、オレンジなどの柑橘系、ぶどう、ワイン、茶があるが、水もかなり有名でボルジョミやナベグラヴィなどがある。鉱物資源はマンガン等がある。金融は、独立した翌年1992年世界銀行に加盟し、1995年通貨ラリを導入する。1ラリは日本円で約75円である。2016年9月現在のレートを参照した。「グルジアの市場の概要」 グルジアの首都トビリシ市には大きな市場が3か所(サムコリ、リロ、ディゼルテル)があり中でも最大規模のディゼルテル・バザールに焦点を充てる。そこは食品、衣料、雑貨、貴金属、家電を豊富に取扱う市場である。 地図にはデゼルテレビとあるが、現地ではバズロバと呼ばれている。バズロバは「市場」を表す一般名詞であるが、バズロバの入り口にはバザールと書いてある。国際人間学研究科 国際関係学専攻 M1安井美穂(YASUI Miho)1970年愛知県生まれ。中部大学大学院国際人間学研究科(国際関係学専攻)博士前期課程在学中。専門は文化人類学。現在、ジョージア国の市場で働く中高年女性5人組を主にインフォーマントとして研究している。

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る