GLOCAL Vol.11
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1 中部大学大学院、国際人間学研究科レポート GLOCAL Vol.11 をお届け致します。 現在、中部大学には6つの大学院研究科があります。そのうち国際人間学研究科は、1991年に国際関係学部を基礎に創設された国際関係学研究科国際関係学専攻をルーツとして発足しました。その後、1998年に設立された人文学部を基礎とする2専攻(言語文化専攻、心理学専攻)が2004年に合流し、名称も国際人間学研究科となりました。さらに2008年には歴史学・地理学専攻が加わり、現在の4専攻体制が整いました。 さて、小誌名の由来でもあるGLOBAL とLOCAL の関係は、今日では海外と国内の関係としてとらえるのが一般的です。しかし歴史を遡れば、国内スケールにおいて全国と地方がそのような関係として考えられていた時代がありました。これは日本だけでなく、地球上の他の地域においてもいえることで、地方が統一されて全国・国という概念が生まれ、国と地方が今日でいうGLOBALとLOCALに似た関係をもつようになりました。つまりGLOBAL とLOCALの関係は相対的であり、時代は違っていても似たような関係があったと思われます。 こうした相対的関係は、地表上の一地方言語から国際的に広まって「世界的言語になった英語」と、各地で使われている「局地的な英語」の間にもみとめられます。標準化(GLOBAL)の利便性には同意しつつも、一方では各地で使われる局地的英語(LOCAL)の存在を排除することはできません。社会的、文化的多様性を無視しては豊かな国際社会の未来は開けないからです。本号ではこうした関係について論じた「国際英語論」のほかに、局地的立場に立たされた人々の生き様に関する事例研究も紹介されています。中世の日本と現代の東欧では時代、地域ともに状況は大きく異なりますが、列強勢力に囲まれた地方部族、あるいは社会の中で少数派として暮らす人々の生き方に関する研究です。 重要なことは、GLOBAL とLOCALの関係が時代や地域を超えた普遍的一般性をもっていることに気づくことだと思われます。通説に縛られることなく、むしろそれを疑い、柔軟な思考や発想に挑戦することに意義があります。「あそび」というありふれた概念についても、常識にとらわれることなく自由に思考の幅を広げていけば、この概念にそなわる別の意外な側面にも思い至るのではないでしょうか。近代日本の一地方における工業化の過程、あるいは都市化にともなう歴史的地名の変容といった現象についても、定説や思い込みを一旦、白紙に戻し、再検討することに意義があるように思われます。 このように取り上げるテーマは多様ですが、人々はいつの時代においても、個人や組織として文化的、社会的、経済的制度にしたがいながら行動してきた。人間はこれまでどのように生きてきたか、あるいはこれから生きていこうとしているか、その軌跡と行く末を、教員、院生ともに明らかにしようとしている。これが国際人間学研究科の今であります。 小誌を通して、本研究科の日頃の活動の一端がご理解いただければ幸いに存じます。2017年10月15日林  上(中部大学国際人間学研究科長)ごあいさつ

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