GLOCAL Vol.4
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2014 2014 Vol.4Vol.42014 Vol.4大学開学50周年記念号大学開学50周年記念号大学開学50周年記念号5 中井さんが利用した、「大学院生海外研究指導委託支援」という制度は、新設されたばかりで、中部大学からの渡航費などの支援を得て、在学中に外国の大学で指導を受けることができる、というものである。中井さんは、この制度のもとで、中国の大学で指導を受けるとともに、並行して現地での調査を行った(中国における日本料理の研究)。 このように、大学院での学びを、それこそ「境界」を越えたかたちで行うことは、私たちの目指すべきあり方の一つだろう。「グローバル人材」ということがよく言われるが、それを中身のあるものとするためには、外国語の運用能力に加えて、外国(および日本)の社会・文化を深いレベルで知る、ということが必要だと思われる。中井さんの後に、多くの院生が続くことを期待している。 社会の要請に応えるということは、もちろん企業のニーズに対応することも含むが、それだけではないだろう。言うまでもなく、大学は研究を核としなければならない。そのうえで、留学生からのニーズに応えることも必要だし、社会人の「もっと学びたい」という強い要望に応えていくことにも、これまで以上に真剣に取り組まなければならない。 誰よりも切実に、そして純粋に「学び」を希求しているのは、実は社会人の方たちなのかもしれない、と感じることがある。西欧の学問の発展の基底に、「アマチュア」の存在があったとは、よく言われることである。学問は大学に在籍する研究者だけによって担われるのではない。大学は、学問そのもののためにも、社会人を広く受け入れ、そこから刺激を受ける中で、自身を検証して磨いていくべきなのだろう。 後掲のインタビューを行う中で、強く印象に残ったのは、大学院に進学してくる人たちの、「より深く学びたい」、という熱い思いである。大学は何よりも、研究の広がりと深化を通じて、そうした強い願いに応えなければならない。博士前期課程に9名、博士後期課程に3名の大学院生が在籍している。 後のインタビューからも分かるように、大学院生の構成も多様である。中部大学の国際関係学部から大学院の国際関係学専攻に進んだ人もいれば、はるばる海外から中部大学の大学院を選んできてくれた留学生もいる。また、強い向学心をもって大学院に入学した社会人の方もいて、お互いに刺激を与えあっている。 留学生が多いことは、開設時からの特色である。これまでの留学生の出身国は、中国、ベトナム、タイ、ネパール、インドネシア、韓国、フィリピンなど、実に様々である。中には、後のインタビューにあるように、国際関係学専攻の卒業生が母国の大学に就職し、その教え子がまた本専攻に留学してくれた、というケースもある。 この専攻の性格からして当然のことであるが、大学院生の研究テーマは様々である。在学中の大学院生のテーマを見ても、「中国における日系企業の戦略」、「アメリカの対外債務問題」、「ネパールにおける女性の就業機会」、「日本在住の外国人女性たちの化粧文化」、「木曽川における川祭り」など、実に多彩である。 つい先日も、修士論文の構想・概要発表会があったばかりだが、こうした多様な研究が大学院生によって報告され、活発な議論が行われた。この発表会には、大学院に関心をもつ数名の学部学生(1年生も含む)も参加してくれた。熱心に聞き入っていたばかりでなく、議論にも加わってくれたのがうれしかった。 また、年度末には、修士論文の公開審査が行われる。しばらく前から、専攻の単独開催ではなく、国際人間学研究科全体で実施するようになったので、ますます研究報告の範囲が広がった。 異なる領域の報告を聞くことは、大学院生にとってだけでなく、教員にとっても刺激的である。私たちは、こうした報告会を通じて、知らず知らずのうちに、「耳学問」的に知識・思考の幅を広げているのだろう。今後の展望 世界に目を向けると、大学院での教育(そして大学院の学位)に対するニーズが高まる傾向がある。ひるがえって日本国内の状況を見ると、少なくとも文系の大学院教育については、社会的な関心が高いとはいえない。これは何よりも、日本においては、文系大学院への進学が、企業への就職において有利に働きにくいからであろう。しかも、教育・研究職のポストは限られており、かなり前からオーバー・ドクターの増加が深刻な問題になっている。 大学側の努力だけでは、問題の根本的な解決は困難であるが、それでも日本の大学院のあり方には、まだまだ大きな可能性が秘められている。国際関係学専攻でも、新たな方向性を探っていきたい。 国際関係学専攻の今後の展望についていえば、後のインタビューに登場する中井法子さんが一つのモデルになるだろう。中井さんは、中部大学の国際関係学部から国際関係学専攻に進学した。学部時代に2回、大学院時代に2回、合計4回にわたって中国に留学している。すべて中部大学の提携校(外交学院とハルピン理工大学)である。修士論文の公開審査(2012年度)国際関係学修士論文構想・概要発表会(2013年度)

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