GLOCAL Vol.4
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4国際関係学専攻主任 国際関係学部 国際関係学科 教授高 英求(こう よんぐ)1962年生まれ。1991年に京都大学大学院経済学研究科博士後期課程を単位取得退学。九州国際大学経済学部を経て、2004年に中部大学国際関係学部教授となり、現在に至る。主たる研究領域は、国際金融論・国際貿易論。国際関係学専攻の特色「境界」を越えるアプローチ門性の弱さ(あるいは「薄さ」)につながる怖れがないとはいえないが、方法論・領域の広がりというメリットによって、そうしたデメリットを十分に補えるように思う。 『GLOCAL』の第1号にも書いたのだが、こうした特徴が最もよく表れるのが、国際関係学専攻のオムニバス講義である。たとえば「研究方法論」という講義では、さまざまな領域の研究者が、それぞれの方法論を語る。たとえば、「国際法の研究方法」、「フランス社会の研究方法」、「国際協力の研究方法」、「経済学の研究方法」、といった具合である(後ろのインタビューを参照されたい)。 国際関係学専攻の歴史と現状 国際関係学専攻は、1991年に国際関係学部を基礎として設立されており、約四半世紀の歴史をもつ。もともとは国際関係学研究科の中の専攻であったが、2004年に国際人間学研究科が誕生し、現在はその中の専攻の一つである。 専攻の目標として、まず「高度専門職業人、有識社会人」の育成が掲げられており、その方面で実績を上げてきたのはもちろんことであるが、あわせて優れた研究者を輩出してきたことは、国際関係学専攻が誇ってよいことであろう(後掲の桃井治郎氏の寄稿文を参照されたい)。 現在(2013年度)、国際関係学専攻には、目標と特色 国際関係学専攻の最大の特色は、「境界」を越えようとするアプローチにある、と言ってよいだろう。少なくとも私は、そのようにとらえている。 正確を期するために、国際関係学専攻の目標や特色について、大学院のパンフレット(『中部大学大学院』)にどのように書かれているか、見ておこう。 「グローバルな社会を政治経済学的、あるいは社会文化学的な視角で分析する能力を養うとともに、人間と社会の持続的な発展はどうあるべきかという研究課題に取り組んでいます。理論構築と現場感覚、思考力と応用力のバランスのとれた国際人、および研究者を養成することが本専攻の目的です。」 これを、もっと専門的な教育内容にからめて述べているのが、次の『学生便覧』(学生に配付される冊子)の文章である。 「政治学、経済学、社会学、人類学などを基盤として、理論と実際、思考力と応用力のバランスをとりながら、広く国際政治、国際経済、人類文化の諸問題、さらには同時代的な人間と社会の諸問題、平和構築、国際協力等の具体的・実践的な諸課題に取り組むことのできる高度専門職業人、有識社会人及び教育研究者を育成することを目標とする。」 ここからも明らかなように、国際関係学専攻は、広い学問領域をカバーしている。さらにいえば、政治学・経済学・社会学・人類学が、いわば横並びの関係で置かれているのが、国際関係学専攻の大きな特徴である。 博士前期課程には、「国際政治経済研究コース」と「国際社会文化コース」という、2つのコースが設置されている。強いて言うならば、前者では政治学・経済学、後者では社会学・人類学の領域のウェイトが大きいが、学生はコースを越えて自由に科目を履修することができる。 繰り返しになるが、国際関係学専攻ならではの特徴は、「国際」という言葉にこめられている、国と国との「境界」を越えて人間と社会について考える指向性にある。 そしてこのことは、学問的アプローチについても言える。すなわち、上で見たように、学問の「境界」を越えようとするベクトルを、私たちはもっているし、学生にそれを可能にするようなカリキュラムを提供していると自負している。 もちろん実際には、大学院生たちは研究テーマを絞り込み、指導教員のもとで、専門性の高い研究をしていくことになる。それでも、主指導1名と副指導2名の専門領域が同じ、ということはあまりなくて、タコ壺的な世界に閉じ込められることはない。それが専

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