GLOCAL Vol.4
27/32

2014 2014 Vol.4Vol.42014 Vol.4大学開学50周年記念号大学開学50周年記念号大学開学50周年記念号25国際人間学研究科 歴史学・地理学専攻准教授水野智之(MIZUNO Tomoyuki)1999年名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程史学地理学専攻単位取得満期退学。専門は日本中世史。2001年、「室町時代公武関係の研究」で歴史学博士(名古屋大学)取得。高千穂大学商学部准教授を経て現職。近著に『戦国期の一向一揆と真宗』(吉川弘文館、共著)、『生活と文化の歴史学3 富裕と貧困』(竹林舎、共著)など。中世日本の政治と権力の研究から整理します。初代将軍足利尊氏から6代将軍足利義教の執政期あたりまでは多くの文書を確認していますが、それ以降は不十分なので、15代将軍足利義昭の時期まで収集する予定です。 天皇・朝廷と幕府の発給文書を収集したら、室町時代を通じて、どのような人々がいかに連携して政治的な集団を形成していたのか、その推移を明らかにし、併せて各地でなされた戦乱の原因などを究明します。応仁の乱以降、将軍家は二分して対立したので、各地の大名がその争いにいかに関わっていたのか、天皇、公家衆はどのような立場にあったかを具体的に究明し、従来の政治史を深化させていくつもりです。東海地域史 これまでいくつかの自治体史の編さんに従事してきましたので、その経験をいかして、東海地方の地域史研究を進めていきます。愛知県下では、史料所蔵者別の資料集しか刊行はじめに 最初に自らの研究領域や史料調査などを紹介し、今後の研究の方向性を述べます。次に大学院での教育について触れ、歴史学・地理学専攻としての将来の構想を展望します。中世日本の公武関係 公武関係とは、朝廷(公家勢力)と幕府(武家勢力)、あるいは天皇と将軍の関係を指します。日本史学において公武関係と言えば、かつては朝廷と幕府が並び立つ中世国家をどのように捉えるかという問題関心により、平安末期から鎌倉時代の政治史が議論の主要な場であったと思います。 室町時代は鎌倉時代の延長線上に見なされ、研究が遅れていましたが、拙著『室町時代公武関係の研究』(2005年)ではこの時代の公武関係についていくつかの論点から検討しました。従来より、日本の国家のあり様は中国・朝鮮といった東アジアの諸国、あるいはヨーロッパ諸国と大きく異なっていると指摘されています。それはアジア型の王朝国家(例えば中国)を模した古代的政治権力の後身である朝廷と、ヨーロッパの封建社会に類似した封建権力である幕府という異質な編成原理に基づく政治権力が同時に併存したという特異性を備えていることです。この点を考察することは、日本の歴史を東西各国の歴史と比較し、現在に至る日本の国家や社会の特質を相対的に把握する上で有意義であると考えます。将来は日本と西洋・東洋との比較から、国制や法制のあり様について研究を進めてみるつもりです。朝廷と幕府の発給文書 日本の国制や法制を相対的に考察することは重要な研究課題ですが、学界の状況として中世後期では朝廷や幕府の政治動向に関して基礎的な研究が十分に進んでいません。室町時代の朝廷や幕府の発給文書はまだ整理されておらず、現在に遺されている文書全体を編年で整理した資料集も刊行されていません。私はこれまで主に日記や編纂物といった古記録の分析から研究を進めてきましたが、文書を収集して考察する必要性を感じています。 朝廷や公家の史料では、2009~2012年度に文部科学省科学研究費・若手研究(B)「室町~江戸初期における朝廷・天皇・公家衆の発給文書と政治的動向」が採択され、朝廷・天皇の発給文書と、摂関家や清華家の史料を収集・整理しました。東京大学史料編纂所、国立公文書館、宮内庁書陵部、国立歴史民俗博物館などから多くの文書を筆写・収集しましたが、未だ十分に確認しきれておらず、全体的な考察はできていません。 武家の史料では、室町幕府の発給文書(御判御教書・御内書・管領奉書など)を収集・シンポジウムの様子

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る