GLOCAL Vol.4
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10目標と特色 言語文化専攻は、国際人間学研究科に設置されている。国際人間学研究科は、国際関係学専攻、心理学専攻、歴史学・地理学専攻と言語文化専攻の4専攻から成るが、その中でも言語文化専攻は、言語と文化を基礎とする複合的・総合的な教育研究を行い、言語文化を体系的に理解した、有為な人間を育成することと多方面の研究を通じて、社会へ貢献することを目的としている。 博士前期課程では「ジャーナリズムコース」「英語圏言語文化コース」「日本語日本文化コース」の3分野を配置し、言語と文化のプロフェッショナルを養成するための体系的カリキュラムを設定している。「ジャーナリズムコース」では、ジャーナリズムの基礎的理論を身に付け、実践的なメディア特性にも通じた情報発信・受信の理論構築能力を養成する。また、複眼的な視点と国際的な視野を養い、多様化・グローバル化する高度情報社会においてジャーナリストとして通用する能力を育成する。「英語圏言語文化コース」では、英語そのものに対する理解を深める英語学、英語話者の文化的背景を学ぶ文化学、英語教授法を含む応用言語学の基礎理論を修得させる。また、英語英米文化に関して、高度な知識と教授技能を持った専門職業人として通用する能力を育成する。「日本語日本文化コース」では、日本語学、日本文学、日本文化の専門性を深め、対外的な発信能力を養成する。また、日本語教員、中学・高校国語科教員、学芸員等、高度な専門職業人としての能力を育成する。 博士後期課程では、メディア・コミュニケーション専門研究演習、英語圏言語文化専門研究演習、日本言語文化専門演習を開講し、各分野の専門性、研究能力をさらに高める。専門能力を活かし、地域社会や国際的分野で企画力や指導力を発揮できる教育者、研究者、知識人を養成することが目標である。言語文化専攻の歴史と現状 言語文化専攻は、平成16年に国際人間学研究科が設置されると同時に、その中に設置された専攻である。開設以来、多彩な教授陣によって指導が行われ、平成24年度までに26名の言語文化学修士を輩出している。ジャーナリズムコースでは情報産業・流通論、情報技術とメディアの過去・現在・未来、ジャーナリズムと倫理などの科目を、英語圏言語文化コースでは、応用言語学、英語教育法、英語学、英米文学、英語圏言語文化に関する科目を、日本語日本文化コースでは、日本語学、日本語教育学、古典文学、近代文学、日本文化、伝承文芸、日本芸能、国語教育に関する科目を開講している。言語文化専攻の特徴の一つは、日本語・日本文化に関心を持つ多数の外国人留学生が在籍することである。自国と日本の比較研究を通して、彼らの研究は学術交流の国際化と日本文化の対外発信に貢献している。 また、「国語」「英語」の中学校教諭専修免許状、高等学校教諭専修免許状の取得が可能であり、修了者の中には、研究を継続する傍ら、中学校、高等学校、大学および大学院において教育に携わる者もいる。日本語教員として国内外で活躍する者もいる。高度専門職業人の輩出は、国際人間学研究科が目指すところである。今後の展望 今後は、 3コースがそれぞれの特徴を活かして一つのグローバルかつ近未来的な研究課題に取り組むことも期待される。 激しく移り変わり、自他の境界が揺らぐ現代社会において、確たる人文知とコミュニケーション能力を有し、言語と文化を通して、従来の固定概念から解き放たれた異文化理解を達成するとともに、自らの文化を客観的に見つめ、正当に評価することのできる人材を育成したい。彼らが次なる50年、さらにはその先の人間社会の未来を保証する礎を築いてくれるであろう。一方で、人文系大学院の修了者の就職環境は、決して恵まれているとは言い難い。現在世にある職種の多くが数十年後には無くなると言われている状況を踏まえて、我々は、彼らの能力を最大限に発揮できる場所を新たに開拓する必要がある。これが我々に課せられた急務である。これまでの人間が作り上げてきた伝統的な人文知を疎かにすることなく、新たな知の大海原へ漕ぎ出す若人を全力でバックアップする所存である。言語文化専攻の特色広大な人文知の海を軽やかに航る言語文化専攻主任 人文学部教授嘉原優子(YOSHIHARA Yuko)関西大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専門は宗教学・宗教人類学。博士(文学)。主著に『バリ島の村落祭祀と神観念』(2010,おうふう)

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