2018年度秋学期開講科目
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授業計画【授業外学習】1)ケネス・クラーク著「ザ・ヌード」などを読んで、なぜ裸体を描くのか、その意味について調べ、美術が人間にたいして持っている意味について考える。2)身体とそれを包み、飾る意味について考え、衣裳、化粧、ファッションの歴史を調べる。4【内容】第4回 本質と存在について、あるいは「出エジプト記」(『旧約聖書』)。「人間とはなにか」という問いは、人間の本質を問うが、そのように問うとき、わたしたちは、人間がすでに、そこに存在することを前提している。人間が存在することを、わたしたちはどのように知ったのだろう。存在とはなにか、と問うことは可能だろうか。本質と存在という、現代思想の根底によこたわる考え方を明らかにする。【授業外学習】1)セシル・B・デミル監督の映画「十戒」(1956年製作)を見て、そこで語られる「在りて在るもの」について調べる。2)「存在」という言葉が日本語で、いつごろから、どのように使われてきたかを調べる。5【内容】第5回 伝統について、あるいは「マタイによる福音書」(『新約聖書』)ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の映画「奇跡の丘」は新約聖書「マタイ伝」の映画化である。それを見て、2000年来、キリスト教がどのように伝えられてきたか、その伝統について調べる。【授業外学習】1)「マタイによる福音書」について調べておく。2)あるものを手から手へ、じかに渡すことが「伝統 tradition 」の意味である。その言葉の使い方について、さまざまな文献で調べる。3)キリスト教に限らず、宗教美術の作品について、さまざまな方法を用いて調べる。6【内容】第6回 存在について、あるいはあるいは井上ひさし『父と暮せば』(1994年)その1。演劇は「舞台に人がいる」ということ、言葉を換えれば「存在」という考え方を、表現の原理あるいは技芸の中心に据えて成立する文化活動である。前回、前々回と続けてとりあげてきた「存在」という考えかたを、ひとつの上演を見ながら、ゆっくり深めていく。【授業外学習】1)すまけい、梅澤昌代が出演し鵜山仁が演出した作品のもとになった井上ひさしの戯曲を丁寧によむ。2)その戯曲における恋愛ドラマの進展と、原子爆弾にかんする考察の深まりの関係について調べる。7【内容】第7回 原子爆弾がもたらしたもの、また死の世界について、あるいは井上ひさし「父と暮せば」その2。前回につづいて「父と暮せば」を見る。原爆後の世界について考える。戯曲「父と暮せば」は広島に落とされた原子爆弾を主題にしているが、そこから展開される世界のあらたな側面、選択されうる死の世界について、調べる。【授業外学習】1)戯曲、観客、俳優という演劇の3要素について調べる。2)広島に落とされた原子爆弾について調べる。3)原爆が広島に落とされた前と、後で何が違うかについて調べる。8【内容】第8回 国家について、あるいはT.アルフレッドソン監督『裏切りのサーカス』(2011年)その1。ジョン・ル・カレのスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が原作の映画を見ながら、民主主義という政治体制のありかたを考える【授業外学習】1)1950年代の、いわゆる「冷戦」について調べる。2)ソビエト連邦の歴史について調べる。3)国家と国家のあいだの対立を解消するための戦争について調べる。9【内容】第9回 戦争について、あるいは「裏切りのサーカス」その2。自国民のために国家が、べつの国家と対立するとき、その対立の解消点をもとめて、国家はなにを、どこまですることが可能だろうか。交渉を有利に進めるための諜報活動はどの程度まで進めることが可能だろうか。あるいは許されるだろうか。【授業外学習】1)民主主義について調べる。2)関心のある政治体制について、具体例に則して、調べる。10【内容】第10回 「役に立たない」ということについて、あるいはF.フェリーニ監督『道』(1954年)「どんな役に立つか分からないが、道端の小石でさえ、きっと何かの役に立っている」と、映画『道』の登場人物は、ヒロインのジェルソミーナに語っている。そのばあい「役に立つ」とは、どんな意味だろうか。わたしたちは何かの役に立つためにいるのだろうか。そのことを調べる。【授業外学習】1)第2次大戦敗戦直後のイタリア映画史を調べる。2)映画について(たとえばネオ・リアリズモ)、人間について(たとえば実存主義)、どのような考え方が戦争との関係で、あらわれてきたかを調べる。11【内容】第11回 自由について、あるいはJ.フォード監督『静かなる男』(1952年)なにものにも束縛されない自由とはどういうものかについて、アイルランドを舞台に伝統と現代をノスタルジックに描いた『静かなる男』を見ながら、考える。【授業外学習】1)19世紀から20世紀にかけてのアイルランド史を概観しておく。2)伝統と自由という概念について、参考書を見つけておく。12【内容】第12回 愛について、あるいは近松門左衛門原作、秋元松代潤色「近松心中物語」(1980年)秋元松代の戯曲は、近松門左衛門の浄瑠璃「冥途の飛脚」ほかを基にして、二組の男女の恋物語を追いながら、実の親子、義理の親子、友情など、さまざまな愛の姿が描かれる。本質と存在、文字と身体という視点から、その上演を細かく分析して、愛の問題を調べる。【授業外学習】1)1980年に帝国劇場で上演されたさいのビデオ映像をもちいるので、下調べできる受講者はきちんと見ておくこと。2)「冥途の飛脚」はよんでおくことが望ましい。13【内容】第13回 青春について、あるいは田坂具隆監督『冷飯とおさんとちゃん』の「冷飯」。日本映画をとりあげ、なにが青春の本質を形づくっているかを考える。オムニバス映画の第1話「冷飯」は、武士の四男坊に生まれ、家督も継げず、一生、冷飯を食いつづけなければならない、本好きな若侍の恋をあつかう。【授業外学習】1)「青春」ということばが、どのようにできあがったかを調べる。2)余裕があれば中島貞夫監督『広島脱獄殺人囚』(1974年)を参考に見る。14【内容】第14回 老いについて、あるいはC.イーストウッド監督『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)ヴェテランの老いたボクシング・トレイナーのもとに、なかなか芽の出ない女性ボクサーが入門してくる。きみのトレイナーは「おれにはつとまらない」と老人は断るが、熱意に負けて、結局引き受けることになった。老いは人間をどう変えるだろうか。映画を見ながら考える。74 現代思想-157 -

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