中部大学日本伝統文化推進プロジェクト活動報告書
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 近年は抹茶味の飲み物や食べ物が人気を集めており、再び人々が抹茶に興味を持ち始めている。しかし、利便性を向上させるため、主に粉末スティックの抹茶風飲料が家庭で好まれている。これでは抹茶の文化のみ先進し、元祖の淹茶法を含む茶道の文化は変わらず薄れていってしまうのではないかと思う。 これは書道でも似たことが言える。私達は義務教育の過程で書道を習うが、義務教育を終えた後も書道を続けているのは、かなりの少人数だろう。実際、私が小学校から帰宅する道中に3つほど点在していた書道教室も、大学進学を機に地元を離れる頃には全て倒産していた。近年外国人からの人気を集めている書道だが、生徒数が増えなければ経営として成り立たず倒産が相次ぐ。また、スマートフォンの普及により現在は便利なタッチ入力が主流であるため、書くという動作に神経の集中を伴う本筋の書道は、減少の一途を辿るのではないか。非常に憂うる事態である。次に能楽に関して述べる。 能楽は、茶道や書道と比べて知名度は劣るが、自分が技術を身につけるのではなく鑑賞するものであるため、どの年齢層からも入りやすく敷居が低い。また、近年は歌舞伎役者と共に能楽師のテレビ出演も増え、さらに敷居が低くなりつつある。実際私も受講を終え、日本らしさを演出するためだと思っていた背景の松の絵は、実は松(神様)に向かって表現、上演、奉納していくという事が元になっており、前にあるはずの松が後ろに映っている事で、鏡板と呼ばれているなどの詳細を学び、茶道や書道は学生の身分では手を出しにくいが、能楽鑑賞への興味は非常に高まった。受講前の私を含め、能楽と歌舞伎の違いが曖昧な人々にとっては、片方に興味を持てば必然的に他方にも焦点が合うため、良くも悪くも歌舞伎と共に親しまれていくのではないかと思う。 最後に日本舞踊に関して述べる。日本舞踊はこれまでの文化の中で最も馴染みが無いものである。能楽は漠然と形式を言葉に出来るが、それに対して日本舞踊は何を指すのか全く想像できなかった。しかし、実際に講義を通して詳細を学んだ結果、現代の文化と最も親和性の高い文化だと気付いた。型など形式が決まっている能楽とは違い、楽曲から使用する小道具まで自由の幅が利くため、アプローチや広告の仕方によっては現代の若者も忌避せず興味を持つのではないかと思う。今回のレポート執筆を通して、世が利便性を追求するが故、人々の興味が薄れつつある文化や、文化の内容ではなく役者の素顔を表に出し人気を保つ文化など、人類の技術の発展により打撃を受けるもの、それらを活かしてより人気を得るものが存在する事を知った。そこで、情報網こそ日本文化継承の鍵であるという結論に達した。文化継承のためには、茶道であれば流行りのコンテンツを模ったお菓子と抹茶をSNSに投稿する、日本舞踊であれば流行りの曲に合わせ、映像映えする小道具を使用した踊りを動画サイトに投稿するなど、柔軟に現代の流行りに寄り添う必要があるだろう。- 18 -

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