中部大学発 魅力ある授業づくり 作品コンクール 受賞作品
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19 この時点で、もう私はその先生に惹かれていた。私の稚拙で邪まな思考を見透かされただけでなく、講義の進め方、スライドの作り方、間を図った喋り方、言葉のチョイス、全てが論理的で合理的であったからだ。講義スライドのたった一文の構成から、文字の大きさまで、なぜその様な言い回しなのか、なぜその大きさなのか、理由が明確であった。 私がより一層惹かれたのは、毎回の講義スライドに組み込まれている「今日のオススメ」である。このスライドでは、先生が今まで読んだことのある本をオススメしてくれるのだ。一見無意味かつ、無駄なスライドかもしれない。しかし、そこには私が今まで潜在的に求めていたものが詰まっていた。  学生は学問を修めるために講義を受ける。それは周知の事実である。しかし、心のどこかで、私は講義にそれ以上の何かを常に求めていたような気がする。淡々と講義を進め、試験を行い、内容を理解しているか確認する。それだけであれば講義資料さえあれば誰でもできるはずだ。しかし、その先生が何を見て、読んで、感じたのかは本人にしか伝えることができない。だから、学生は自身より遥かに知識も経験も豊富な、先生の感性を知りたいのではないだろうか。なぜそう考えるのか、なぜその様な選択をするのか、どこからその様な言葉の言い回しが泉のごとく湧き出てくるのか。学生は ―少なくとも私は―、言葉には言い表せない先生の感性を知りたいのだ。だから私はアナタに惹かれ、アナタを知りたくなった。 そして今、私は今日のオススメを読んでいる。授業を担当した先生に魅せられ、刺激を受け、新たな気づきが生まれたのですね。当たり前のことを当たり前にしない、先生からのメッセージを受け止める力は素晴らしいです!情緒的な表現は印象深く、教職員審査員から多くの支持を得ました。講 評

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