平成27年度成果報告書
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2 2)カヤネズミ生態の基礎研究 カヤネズミの球巣調査(6月・10月)および球巣環境の把握のための永久コドラートの修正,植生調査,6月での餌資源としての昆虫相調査,無人飛行機による航空撮影を実施した.その結果,当地区では9科14属16種の植物が,昆虫は4綱15目78科142種が確認された.巣は6月に14個,10月は3個が確認され,昨年度と比べると総数で32個少ない結果であった.架巣植物は昨年同様に100%がオギであったが,オギの草丈が約30㎝,架巣高も約20㎝高くなっていた.昨年度の64%が100~140㎝の位置に架巣され,オギ個体が100㎝未満あるいは220㎝を超えると架巣されにくい傾向が認められていた.さらに,クズによる被圧が本年度は昨年度よりも面的に広がっており,クズの被覆とオギの高層化が架巣数の減少要因の一つと考えられた.冬期捕獲調査を予定していたが,雪のため断念した.UAVによる航空画像は5月に撮影し,植生図作成の参考情報として活用した. 3)今後 企業・市役所関係者からは,今後も保全協力・研究を続けて欲しいとの強い要望が来ている.保全についてはクズの効率的な除去が今後の大きな課題である.学生や市民の人的資源には制限がありこれまでと同様の手法では効果は低い.河川沿い等はクズの根源となっているが,危険なため作業できない.このエリアの除草は,大学やボランティアの仕事ではなく行政の仕事だと春日井市には伝えてある.除草剤を使わないのであれば,クズの成長期での複数回の除草が必要と思われるが,カヤネズミの繁殖期での頻繁な撹乱作業は逆効果になる危険性もある.オギ自体の除伐は今回が初めてであり,次年度のモニタリングは重要である.いずれにせよ,質の高い試行錯誤とモニタリングを重ね,よりよい保全を官学民協働で目指したい. ※画像は上段左から,カヤネズミの球巣,草刈作業の様子(10月),草刈作業開始前説明(10月),クズの根, 下段は草刈作業後の保全区の様子(10月) 活動成果の公表 1.中部大学ESD活動発表会にて4年生2名が2014年からの活動内容・結果を報告(山内貴史・長井考彰,春日井市での産官学民協働によるカヤネズミ保全活動,2015年6月24日,不言実行館1階). 2.市民団体である「中部の環境を考える会」に講師として招待され,2015年10月10日に中部大学鶴舞キャンパスにて,同様の活動内容と結果を報告. 3.春日井市の環境保全委員会にて2016年1月12日に本年度内容を報告(春日井市役所). 2 活動報告-68-

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