EDUCATUS Vol.2
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1.はじめに 本学では、コロナ禍に様々な対策をしながら学びの場を保障しています。ここでは、現代教育学部・生命健康科学部・工学部の連携の取組みを紹介します。2.サーモグラフィシステムの開発 工学部創造理工学実験教育科では年間受講生1,500人超の講義があり、集団感染防止を目的に発熱異常者の検知を可能にするサーモグラフィシステムを開発しました。コロナ感染者には発熱症状があると当初から言われ、過去の新型感染症(SARS等)でも発熱者検知の重要性が知られていたためです。 システムの原理は、発熱体からの放射赤外線をセンサで検出し、熱画像(熱分布)として可視化する点です。「体温測定」ではなく「表面温度の熱分布」の可視化ですが、体表面温度は体温上昇に追従するため、発熱者の検知が可能になります。なお、巷には多くの体温測定器が溢れ、原理・性能も千差万別です。自分が使う測定器の性能を十分に把握しておくことはとても大切です。3.フェイスシールドの考案 感染対策は、消毒に加えてマスク(透明マスク除く)着用が一般的です3学部(現代教育学部・生命健康科学部・工学部)連携による保育者養成でのコロナ禍対策~サーモグラフィと血中ガス分析によるフェイスシールドとマスクの影響評価~現代教育学部 講師 千田 隆弘 、生命健康科学部 助教(実習講師) 堀田 清司 、 工学部 准教授 大嶋 晃敏 • 教授 伊藤⦆響8が、マスクには、着用中の運動での死亡報告(中国)や、呼吸確保のために5歳以下は着用禁止(WHO)、表情も意思疎通の手立てである手話には不向き、などのデメリットもあります。一方、乳幼児の発語の発達には、大人が口元を見せる必要があるなど、教育には「表情」という非言語コミュニケーションが非常に重要です。 幼児教育学科では、クリアホルダー1枚で作ることができ、感染予防にも配慮しながら表情を伝えられるフェイスシールドを考案し 、新聞にも掲載されました(6.11中日新聞)。 WHOのいうように額から顎の下まで覆うことができるように工夫しました。掲載日当日から反響があり、現代教育学部 WEBサイトでダウンロードができる型紙を紹介しています。  7月に幼稚園の年長児対象にお面として作ってみせたところ、喜んで着用する姿があり、9月には学生も自分のお面製作を行いました。油性ペンや折り紙を貼り付けることで、個性の光る作品となり「自分で作ることで愛着が沸いた」そうです。4.比較調査 フェイスシールドやマスクの着用時、非着用時を比較した場合、身体にはどのような影響があるのでしょうか。そこで、サーモグラフィと経皮血中ガス分析装置(TOSCA®)による計測を9・10月に、学生を対象に行い、各状態での体表面温度、血中CO2、酸素飽和度、脈拍数を測定し、更に感じたことを尋ねました。 その結果、安静時/活動時の比較から、血中CO2濃度の有意な上昇はみられませんでしたが、マスクではフェイスシールドと非着用よりも血中酸素飽和度が高くなり、フェイスシールドまたはマスクを着用して活動すると、有意に脈拍数の上昇が見られました。また、安静時/活動時とも、フェイスシールドとマスクの着用は非着用よりも息苦しさを感じる割合が有意に高まりました。 アンケートでは、フェイスシールドの長所「表情が見えて安心」/短所「視界の悪化」、マスクの長所「感染リスク軽減・安心」/短所「表情が伝わらない」「息苦しさ」が挙がっています。5.おわりに 学部間連携によって、互いに新たな視点で教育に取り組めるようになりました。学生間交流もあり、ワンキャンパスならではの成果もありました(左から、大嶋先生、千田(編著者)、堀田先生)。 最後になりましたが、サーモグラフィシステムの設置等にあたってご協力頂きました、工学部教育技術部の鈴木建司先生及び伊藤智幹先生に心より感謝申し上げます。

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