EDUCATUS Vol.2
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6障害者の自立と社会参加に向けた取組 学校段階から将来の就労や社会参加を目指して様々な作業種目を設定して学習する取組は、日本においても盛んに実践されています。また、円滑な社会への移行を目指し、企業内実習も高等部2年生段階から行われています。現在、日本では障害者雇用率の引き上げも追い風になり雇用促進が図られてきているところです。 しかし、タイ国では障害者に対する偏見や差別がまだ残り、企業内実習までは行われるようになったものの、就労に結びつくことは少ない現状です。   現在、タイ国では、特別支援学校の教師が中心となり関係機関との連携を図りながら、障害者の学校から社会への円滑な移行のための進路指導モデルの開発研究に取り組まれています。そこには、日本で従来から行われてきた進路指導、そして最近日本でも力を入れて取り組んでいるキャリア教育の視点や方法が取り入れられています。日本への視察を重ね、国際シンポジウム開催に尽力した現代教育の先端をゆく Ⅱ元ロッブリー特別支援学校校長のSujin Sawangsri氏は、キャリア意識は児童期の段階から始まり、学校においては児童生徒の職業や働くことへの意識と自己肯定感を高めるカリキュラムが必要であると述べています。また、日本の学校に配置されている進路指導主事のように生徒に合った職業開拓をし、様々な情報共有を図りながら生徒と企業や雇用主とをつなぐ役割の職員や、日本で実践されている個別の教育支援計画や指導計画、卒業時の移行支援計画のようなサービスプランが必要であることを主張しています。 現在、日本で全ての学校段階で実践されているキャリア教育は、タイ国においても取り組むべき課題として認識され始めています。今後さらに、日本における研究や実践を進め、それを紹介しながら、共通する課題認識のもと、モデルプラン開発の研究を進めていきたいと考えています。今後の課題 タイ国では、日本より7年も先んじて国連の「障害者権利条約」を批准するなど、法整備はかなり早期に進められてきました。しかし、実際の社会経済や教育の状況は、首都バンコクとそれ以外の地方との格差が大きく、地方では障害児が教育を受けられる環境も整えられていない現状があり、法令と現状の乖離が問題となっています。地方の障害者の発見と対応、一般の学校の教師の意識改革を進めることがタイ国の最重要の課題です。今後も交流を継続しながら、日本型特別支援教育の海外展開を進めていきたいと考えています。

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