EDUCATUS Vol.2
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2現代教育の先端をゆく Ⅰ理科教育のこれからを考える現代教育学科 味岡ゆい 講師現代教育学科 講師 味岡 ゆい AJIOKA Yui博士(応用生物学)(中部大学)専門分野:生態学研究テーマ:遺伝的多様性ノーネットロスに向けた里地里山指標種の生育地環境評価授業科目:理科概論、科学教育演習、理科実験新型コロナから得た理科教育の課題 2020年5月、これまでの対面授業とは違う新しい講義形態、遠隔授業が始まった。講義・演習科目はZoomによる双方向の対面講義、大学の講義システムCoursePowerやGoogleシステム(Classroom・GoogleDrive・GoogleForm)を活用した資料配布や課題提出により、従来の講義方法に近い環境を目指し、講義に当たった。しかし、実験科目は、学生自身が考え、行動し、実行し、知識・技能を深めていく科目であり、遠隔講義でできることは限られた。これからの理科教育でできることは何か考えていく。これまで… 理科教育は、物理(エネルギー)・化学(粒子)・生物(生命)・地学(地球)の4つの分野(領域)から成り立っているが、今回は生物分野に絞って話を進めていく。生物はその名の通り、「生きものを教える」科目であり、生物の形態(つくり)・生理(はたらき)・生態(くらし)・系統(つながり)について学習する。学習指導要領(小学校2020年度から、中学校2021年度から開始)の改訂により、生物分野の学習内容は「生命に関する自然の事物・現象を主として多様性と共通性の視点で捉えること」、そして「遺伝子>細胞>個体(種)>生態系」の階層性により小・中・高と学校段階が上がるにつれ、内容が充実することとなった。 私は以前より、学生には書籍や教科書に載っている一方向から見た限られた生物のすがたではなく、ありのままの様子を観察してほしいと思い、キャンパスを教材フィールドとして活用し、できる限り校内に生息する生物を講義で用いてきた。また生物は、生物そのものの情報にとどまらず、その生物を含む生態系を評価する指標ともなり、生態系レベル新型コロナから得た理科教育の課題 2020年5月、これまでの対面授業とは違う新しい講義形態、遠隔授業が始まった。講義・演習科目はZoomによる双方向の対面講義、大学の講義システムCoursePowerやGoogleシステム(Classroom・GoogleDrive・GoogleForm)を活用した資料配布や課題提出により、従来の講義方法に近い環境を目指し、講義に当たった。しかし、実験科目は、学生自身が考え、行動し、実行し、知識・技能を深めていく科目であり、遠隔講義でできることは限られた。これからの理科教育でできることは何か考えていく。これまで… 理科教育は、物理(エネルギー)・化学(粒子)・生物(生命)・地学(地球)の4つの分野(領域)から成り立っているが、今回は生物分野に絞って話を進めていく。生物はその名の通り、「生きものを教える」科目であり、生物の形態(つくり)・生理(はたらき)・生態(くらし)・系統(つながり)について学習する。学習指導要領(小学校2020年度から、中学校2021年度から開始)の改訂により、生物分野の学習内容は「生命に関する自然の事物・現象を主として多様性と共通性の視点で捉えること」、そして「遺伝子>細胞>個体(種)>生態系」の階層性により小・中・高と学校段階が上がるにつれ、内容が充実することとなった。 私は以前より、学生には書籍や教科書に載っている一方向から見た限られた生物のすがたではなく、ありのままの様子を観察してほしいと思い、キャンパスを教材フィールドとして活用し、できる限り校内に生息する生物を講義で用いてきた。また生物は、生物そのものの情報にとどまらず、その生物を含む生態系を評価する指標ともなり、生態系レベル

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